新ネットワーク思考から・その03
アルバート=ラズロ・バルバシは、スケールフリー・モデルでは Google のように新入りが成功する見込みはない、なぜならこのモデルでは、それ以前のモデルと同様、ノードはどれもみな同じとしているからであると考える。だがここで、ノードはそれぞれ異なるという点を考慮しなければならない、ということに気が付くことになったのである。
そこで、新入りに成功するチャンスを与えるための手っ取り早い応急処置を考え、競争的環境において、ノードはそれぞれ「適応度」をもつとしてみたのである。この「適応度」によって、それぞれのノードが競争の最前線にとどまる能力を定量化したのである。
しかしここで新たな疑問が提起された。スケールフリー・モデルに見られるベキ法則の根底には、全てのノードは同じダイナミックな規則に従ってリンクを獲得するという仮定があった。しかるにノードごとに成長速度が異なるようなネットワークは、スケールフリーになるのだろうか、というものである。
この疑問を含めて適応度モデルの性質を詳しく調べていくうちに、簡単な数学的変形を施すと、ボーズ=アインシュタイン凝縮と一致する式が出現し、ネットワークの中に「一人勝ち」現象を起こすものがある、ということが先ず分かってきたのである。
更に研究を続けていくと、ネットワークの振る舞いとトポロジーはリンクやノードの性質とは関係なく、適応度分布の形で決まることがわかってきた。このことは、トポロジーの観点から、すべてのネットワークは二つのカテゴリーに分類出来ることを示唆していたのである。
一番目のカテゴリーに属するのは、スケールフリー・トポロジーが生き残るようなネットワークで、「適応度の高いものが金持ちに」なり、適応度の一番高いノードが最大のハブに成長するというものである。どの時点でもノードにはヒエラルキーが存在し、度数分布はベキ法則に従うのである。
二番目のカテゴリーに属するのは、適応度の一番高いノードがすべてのリンクを奪い、他のノードのリンクはほとんど無くなるようなネットワークである。この「一人勝ち」ネットワークはスケールフリーではないことが分かってきた。ハブが一つだけあり、残りはすべて小さなノードなのである。
この違いは重要である。あれほどすばやい成功を収めた Google も一人勝ちではなく、「適応度の高いものが金持ちになる」という典型的な例なのである。それに対して、すべてのリンクを奪ったスターがいる一人勝ちネットワークには挑戦者の居場所が無いということである。
一人勝のネットワークは、現実に存在するだろうか?もしもそんなものがあれば目に付かないはずはない。一人勝の現象は、スケールフリー・トポロジーの特徴であるハブのヒエラルキーを打ち壊し、一つのノードがすべてのリンクを奪う星形のネットワークに変えてしまうはずである。
つづく。
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